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バーバリーという選択──雨の街から始まった、静かな品格の物語
華やかなロゴや一瞬の流行で注目を集めるブランドが多い中、バーバリーはどこか静かで、慎ましく、けれど確かに人の記憶に残る存在です。なぜ人はこのブランドを選ぶのでしょうか。なぜ世界中で100年以上愛され続けてきたのでしょうか。
その答えは、単なる「有名だから」「高価だから」ではなく、もっと深いところにあります。

雨の国イングランドで生まれた、ひとりの青年の発想
19歳のトーマス・バーバリーは、イギリスのハンプシャーで小さな洋服店を開きました。貴族でもデザイナーでもない、ただ「人々が風雨に耐えられる服を作りたい」と願った青年でした。
当時の英国は雨と湿気の国。濡れた服は重く、体温を奪い、人の命さえ脅かすことがありました。トーマスは「雨に負けず、しかも身体を締めつけない服を作れないか」と考え、試行錯誤を繰り返します。そして生まれたのが、のちに世界を変える生地、ギャバジンです。
雨を弾き、風を防ぎ、しかし肌が呼吸できる。自然と人間のどちらも裏切らない布でした。

戦場で生まれ、映画で愛されたトレンチコート
ギャバジンから誕生したトレンチコートは、第一次世界大戦でイギリス軍の将校たちに正式採用されました。肩のエポーレットは双眼鏡や無線機を固定するため、胸元のストームフラップは雨を防ぎ、腰のDリングは手榴弾や地図を吊り下げるためのもの。すべてのディテールに意味があり、飾りではありませんでした。
戦後、この軍服は街に戻ります。兵士たちは故郷に帰った後も手放さず、作家や記者、映画の主人公たちが纏い始めます。やがてスクリーンの中でオードリー・ヘプバーンやハンフリー・ボガートが着こなし、トレンチコートは「戦場の服」から「永遠のスタイル」へと変貌しました。
ブランドを象徴するチェック柄と、目立たない気品の強さ
内側にそっと縫い込まれていたベージュの格子柄──バーバリーチェック。
最初は裏地にすぎなかったものが、次第にスカーフとなり、コートの裏地から表面へと現れ、いまでは世界でもっとも認識される柄のひとつになりました。それは過剰な主張ではなく、控えめな確信のようなもの。
「わかる人にだけ伝われば、それでいい」
そんな哲学が、バーバリーには一貫して漂っています。

なぜ人はバーバリーを選ぶのか
バーバリーを選ぶ人は、派手さを求めているわけではありません。
むしろ、声を荒げる必要のない自信、自分のスタイルを信じる静かな強さを好む人が纏うブランドです。
流行のブランドを選ぶことは簡単です。しかしバーバリーを選ぶということは、「自分は流されない」という意志に近いのかもしれません。
丁寧に仕立てられたトレンチコートは、10年先も美しく、羊毛のマフラーは冬の冷たい風から首元を守り、そのチェック柄は決して騒がず、でも近づいた瞬間に気づく存在感を持っています。
時代が変わっても、バーバリーが古びない理由
近年、バーバリーは革新も止めません。
新しいロゴ「TBモノグラム」の登場、ストリートブランドとのコラボレーション、デジタルファッションショーやAR試着の導入、再生素材やリサイクル羊毛の活用など、伝統を守りながらも未来に向かう姿勢を確かに持っています。
それでも、ギャバジンの防水素材も、トレンチのシルエットも、雨のロンドンの風景も変わらないままそこにあります。つまり、変わるところと変わらないところ、そのバランスこそがブランドを生かし続けているのです。

結び──バーバリーとは、“生き方”をまとうこと
バーバリーの服は、あなたを誰かのように見せる服ではありません。
あなた自身を、少しだけ強く、美しく、凛とさせる服です。
雨が降っても姿勢を崩さないこと。
流行に追われず、自分のテンポで歩くこと。静かだけれど確かな美しさを信じること。
それが、バーバリーというブランドを選ぶ理由。
そして、バーバリーを纏う人が纏っている“生き方”なのです。
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